手書きPOPの思い出

 『 オレンジ病棟 』 を 平積みしてくださった何軒かの書店さんに、
 せっかくなので POPを書いて持っていこうということになった。

 切れ者である 担当編集者さんのアイディアだった。

 
 だが、 いざ書くとなると、 どんなふうに書いたらいいのかが
 わからない。 ふだん目にするPOPだが、 それほど注視している
 わけではなかった。

 そこで 連日書店さんを何軒もまわり、 POPのデザインや
 どんなことが書いてあるのかを 携帯のカメラにおさめ、 研究した。 

 どのような紙やマーカーをつかえばよいのか 文房具屋の店員さんに
 相談し、 いろいろと教えていただいたりもした。

 その結果、 ディスプレイされても 後ろの本のさまたげにならない 
 はがきサイズの厚紙と、 四種類のマーカーをつかうことになった。

※写真は、 ぼくが参考にした 『 氷の華 』 のPOP。 
  幻冬舎ルネッサンスから生まれたベストセラーだ。

携帯におさめたサンプルを見比べてみたものの、 字体や文字の
サイズ、 色づかい、 イラストやシールの有無など、 POPの形式は
種々様々だった。

なかには、 コメント欄に文芸書担当の方が書き込めるようにできている、 
イラスト付きPOPもある。 

おそらくは 出版社が提供したものだろう。

スタイルはどうであれ、 POPの文句はどれも 文芸書担当の方が
書いたものだけに、 切れのよいものだった。

ぼくは あたまを悩ませた。

まさか自分で書店店員さんが書いたように、 「 こりゃすばらしい! 」
「 ブラボー! 」 などと筆するのも、 きまりが悪いので できない。

何をどう書いたらいいのか わからなかった。

そこで担当編集者さんに、 メールで相談した。

いただいたアドバイスは 以下のようなものだった。

朝丘さんが 『 オレンジ病棟 』 のなかで好きなところを
書いてみてはどうでしょう。

――なるほど。 それなら 自分にも書けるかも。

結局、 あれこれと試行錯誤を重ねた末、 写真のような文章に落ち着いた。

……ボツにしたやつとはいえ、 おそろしいほどに むさくるしい字だ (汗)
うまく書けたやつを撮っとけばよかった。

書くことが決まり、 机上での格闘が始まった。

心を注いでも 集中力がキープできず、 〝 あと一行 〟 というところで 
返すがえす 書き損じた。

ペンのタイプによってサジ加減が異なるので、 厄介だった。

字がへたっぴなのは 仕方がない。 

拡大印刷した文章を手本にし、 しこしこと書いた。

結局、 一週間くらいかけて百枚以上書き、 うまく書けたのは
十枚弱か。

岡山の友人から、 平積みにされている書店があるとの連絡がはいり、 
まずは そこの文芸書担当者さん宛てに、 出来あがったPOPと手紙を
郵送した。

旭川の、 置いてくださっている書店さんにも、 同様のものを送った。

自分で行かれる書店さんには、 ダイレクトに自分の手で持っていった。

紀伊国屋書店さん。
TSUTAYAさん。
天一書房さん。

持っていった三軒の書店の店員さんは、 みなさん親切だった。

地元の天一書房さんでは、 店員さんがPOPに、
「 ○○区×町に在住の 著者さんの直筆です 」
と、 キュートな字で 書きそえてくれた。

こころよく 受けとってくださった書店店員さん。 
ぜったいに 見ていないだろうけれど、 感謝しています。

ほんとうに ありがとうございました。

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この記事は、もうすぐ消滅するgooブログに、2010年7月11日、7月14日、7月17日に掲載されたものです。

©2010 Daisuke Asaoka