スケープゴート(いけにえ)

私の小説『 アミューズメント ・ ホスピタル 』に『 精神科 』 というエピソードが
ある。

ストーリーはこうだ。

病院スタッフに暴力をふるって精神科に押し込められた患者が、 閉鎖病棟に監禁
され、 スタッフのみんなから壮絶なイジメにあい、 精神が崩壊するまで追い込ま
れていく。

じつはこの男、 かつてこの病院の精神科医の親友をいじめて自殺に追い込んだ
張本人なので、復讐されているわけだが、 男を中傷する病棟スタッフたちは、 
マジックミラーの向こう側にいて、 彼らからは男が恐怖する様子が丸見えでも、 
男からはスタッフの姿が見えない。

これは、 顔が見えない相手から、 だれもが個人攻撃を受ける可能性がある
現代のネット社会の風潮を皮肉ったものだ。

攻撃対象とする人間を、 マジックミラーの向こうから、 みんなで寄ってたかって
叩く。

このところ、 号泣元県議員に対するネットでのバッシングの記事は、 読んでいて
気分がよいものではなかった。 ( 読まなければよい話ですが…… )

マスコミも民衆もこぞって死にかけている人間に、 辛辣な言葉を浴びせる。

自分たちは、 パソコンや携帯といった安全なマジックミラーを通して……。

確かに、 号泣した元県議員のやったことは、 自業自得である。 決して擁護
できるものではない。

なのではあるが、 たとえ相手が犯罪者であっても、 人が人をオモチャにして
良い理由はない。

犯罪者、 もしくは過ちを犯した芸能人をスケープゴート ( いけにえ ) と
して叩くことを喜びとしている人種を目の当たりにすると、 つくづく日本人の
民度も堕ちたなぁ、 とおもう。

あまり暗い気分は引き寄せたくないので、 ニュースから離れていたい今日
このごろです。

◆この記事は、もうすぐ消滅するgooブログに、2014年7月22日に掲載したものです。

©2014Daisuke Asaoka

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