a-haのコンサートに行く2009 その3
JCBホールのロビーは シンとしていた。
コンサート開始から 七十分くらいが過ぎていた。
病院で 脳検査の結果を聞いたあとで、 しんどくなっていた。
手紙と亀は、 入場してすぐに、 担当の係員に手渡すことができた。
二重扉のなかへはいると、 なじみのあるヴォーカルが
全身を包み込んだ。
ノッている人たちの面前を横切っては悪いので、 無理に 自分の
座席へは行かず、 そのまま二階席のうしろの通路で
ステージに立つa‐haを眺めた。
ステージ中央には、 ヴォーカルのモートンさん。
天上的な美声は、 生 (なま) で聴くと、 より 光彩を放っていた。
『 summer moved on 』という曲では、 21秒間息継ぎなしで歌うという
至芸を披露し、 大喝采を浴びていた。
ステージ右手では、 ギタリストのポールさんがバンビのように
跳ねながら、 ギターを弾いていた。
寡黙 なポールさんは、 ぼくにとって 特に気になる存在だ。
かつて 友だちから 「 朝丘さん、 しゃべらなさ過ぎ 」 とか言われちゃっていた
ぼくには、 どこか他人とはおもえないところがあった。
作曲の才能には すごいものがある。 赤ちゃんのおしゃぶりのように、
いつもギターを携えている。 根っからのミュージシャンなのだ。
そして、 ステージ左手では、 キーボードのマグスさんが
熟 (こな) れた演奏を披露している。
曲の合間に、 一生懸命 会場を盛り上げようとしていた。
気づかいができる人なのだ。 きっと優しいのだろう。
ヒートする会場とは正反対に、 ぼくの心は
異様な静けさに包まていた。
五年前、 交通事故で死にかけた自分が こうして会場の熱狂のなかに
いることが、 とても不思議だった。
◆この記事は、2009年12月5日にgooブログに掲載したものです。