表紙のイラスト解説 その16

立ち入り禁止のボイラー室を抜け、 非常口をさがすクルミ。

あたりは真の闇だ。

ドアノブに手を伸ばそうとしたところを ライトに照らし出される。

警備員に見つかったのだ。

精神病棟のデイルーム。

患者たちは 思いおもいに時を過ごしている。

ソファーに でれーっと寝そべり、 テレビを見つめている者。 
硝子で仕切られた、 所狭いスモーキングルームで一服ふかす者。 
漫画や週刊誌の記事を ひろい読みする者 etc.etc.

心淋しい彼らを、 アットホームな空気が やさしく包み込む。

見舞いにきた鶴本さんに、ミッチーからの手紙をもらうクルミ。

ミッチーも再入院だが、 以前とは状況が異なっていた。

弱った心を抱えた者同士だからこそ、 ふたりには
通い合うものがあった。

病院を飛びだし、 西も東もわからぬまま、 表通りを足任せに
歩くクルミ。

屋上のある高い建物をさがし、 ただただ上方を仰視している。

死への怖気をごまかすため、 ポケットボトルのウイスキーを
引っかけてはいるが……。

高い雑居ビルの上階から 下をながめるクルミ。

飛び降りようにも、 なかなか一歩が踏み出せない。

「 大丈夫ですか? 」

赤い髪の女子高生に声をかけられるが……。

主治医にぴしゃりと遣られ、 忍び泣くクルミ。

こぼれおちる涙は、 剣突を食ったせいじゃない。

どうにもならない自分の身の定めが、 悔やみきれ
なかったのだろう。

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この記事は、もうすぐ消滅するgooブログに、2011年2月22日、6月13日、8月13日、9月28日、2012年1月26日、3月22日に掲載されたものです。

©2011 2012 Daisuke Asaoka