旭川中央図書館からのおくりもの その2
『オレンジ病棟』の朗読CDは8時間52分あるので、 およそ二か月かけて拝聴した。
女性がさらりとした声色で朗読されている。
飽きがこない話し方だ。
自然体でクセのない蒼井優さんの演技に通ずる印象を受けた。
朗読してくださった方からいただいた手紙によると、 この方は
これまで何冊もの本を音声訳されているらしい。 なるほど 確かに
熟達されているのがわかる。
技巧を凝らし、 キャラによって声づかいを変えている。
聴く人にとって、 とてもわかりやすい。
練達した色づけにより、 キャラが独り立ちしているなあという
印象を受けた。
歌の部分はハミングすることなく、 ふつうに読まれていた。
AV資料では、 (注)が挟まれてあった。
たとえば 『 希死念慮 』 という言葉なら、
〝 希 〟 → 希望の〝 希 〟
〝 死 〟 → 生き死にの〝 死 〟
〝 念 〟 → 念ずるの〝 念 〟
〝 慮 〟 → 〝 慮(おもんぱか)る 〟
……てな具合だ。
書いているときは気がつかなかったが、 〝 肩甲骨までたれた長髪 〟
なんていう表現がでてきて、 〝 鎖骨までたれた髪 〟って
書きたかったのだろうなあ、 なんて、 聴いてみて気づいた部分が
あった。
まあ、 あのころよりは言葉の選び方がまともになったかな。
『 オレンジ病棟 』 は 小説なのでフィクションが含まれているが、
実話をベースにしている部分が少なくはない。
聴きながら、 こんなこともあったんだなあ、 なんて思うところが
あった。
こんなこと書いたっけ?っていうような発見もあった。
著者がいうのもなんだが、 とてもよくできたAV資料だった。
AV資料が市販のオーディオブックCDと異なっているのは、
本文以外のこともきっちり読まれていること。
目次とそのチャプターのページ数、 AV資料の完成日。
奥付では、 出版日から楽曲利用許諾のナンバー、 幻冬舎ルネッサンスの
住所、 電話番号、 HPアドレスまで朗読されている。
大変 わかりやすい。
8時間52分を読み上げるのも、 それを6巻に編集するのも、
たいへんな根気と労力を要したことと思う。
ぼくは 書き手としては未熟だ。 それなのに 作品が著者の手を離れ、
AV資料にしていただけことは 本当にラッキーだったと思う。
ありがたい半面、 申し訳ない気さえする。
こうしてAV資料にしていただけたのは、 けっして自分の力ではない。
図書館にAV資料をリクエストしてくださった方、 資料を製作してくださった
〝 旭川本の会 〟 の方々、 本づくりをサポートしてくださった幻冬舎ルネッ
サンスの編集者さん、 校正さん、 素敵な表紙に仕上げてくださった丹下
京子さん、 江草英貴さん、 図書館に本を置いてもらえるよう、はからって
くださった営業さんらのおかげである。
ほんとうに心から感謝している。
現在 なんらかの事情で つらい思いをしている旭川の方が、 たまたま
でもこのAV資料を聴き、 クルミ、 ミッチー、 鶴本さんの滑稽(こっけい)さ
を笑って、 すこしでも心の和みにしてもらえたらというのが、
著者としての願いである。
◆この記事は、もうすぐ消滅するgooブログに、2011年3月4日、6日、10日に掲載されたものです。
©2011 Daisuke Asaoka