旭川中央図書館からのおくりもの その1
半年ほど前の?こと。 Googleで 『 オレンジ病棟 』 を検索したら、
〝 『 オレンジ病棟 』 全6巻。 原作/朝丘大介 〟 という文字が
目に飛び込んできた。
――!? なんじゃ、こりゃ。
確認してみると、 旭川中央図書館のAV資料であることが判明した。
これには面喰らった。
まさか自分の本がAV資料になっているだなんて、 思っても
みなかったからだ。
ぼくは即日 旭川中央図書館あてで、 朗読してくださった方に
謝辞の手紙をだした。
ぼく自身、 小説をどう書き始めたらよいものか 頭を悩ませていたころ、
中島らもさんという作家さんのリズムを身につけようと 二時間テープに
何本も朗読をしたことがある。
現在も らもさんの読みものを朗読したテープを作製しているが、 まず
読みづらいところに赤でチェックを入れ、 何度も読み返したりしてから
録音するので、 二時間テープを一本録するのに 一年がかりの作業である。
だから、 朗読資料をつくることが いかに根気がいる骨仕事であるのか、
すこしはわかっている。
手紙には そういった余話を交え、 310ページもある本を朗読して
くださったことへの、 労(ねぎら)いの言葉をちりばめた。
『 オレンジ病棟 』 がAV資料になったことを知ったぼくは、 入院中に
仲良くなった旭川の知人に 電話でそのことを話した。
すると、 その人は、 著者が聴きたがっているので、 AV資料を
一週間ほど貸してもらえないかと図書館に問い合わせてくださった。
はからずも旭川中央図書館は、 その人の家の すぐ鼻の先だったのだ。
そのときは、 AV資料は図書館でのみ閲覧が可能であり、 館外への
持ち出しは不可とのお返事を伝え聞いた。
まあ、 遅かれ早かれ中央図書館のAV視聴覚室で、 旭川の街並みを
眺めながら聴くことになるだろうという予感はあった。
12月になり、 ぼくのもとに一通の封筒が届いた。 送り主を
見ると、 旭川中央図書館の視力障害者コーナーの方からだった。
中をあけると、 〝 どうぞお収めください 〟 という図書館館長さんの
承諾つきの手紙とともに 『 オレンジ病棟 』(8時間52分)と書かれた
CD-Rが入っていた。
手紙には、 利用者の希望でボランティアグループにより音声訳され、
録音図書として製作されたことが書いてある。
朗読してくださった方宛てに送付したお礼の手紙に、 とりあえず こちらの
住所を書いておいたので、 わざわざ送ってくださったのだ。
まさかダビングしていただけるとは思ってもみなかったので、
ほんとうに嬉しかった。
◆この記事は、もうすぐ消滅するgooブログに、2011年2月26日、3月2日に掲載したものです。
©2011 Daisuke Asaoka