第16回300文字小説賞 優秀賞受賞作『代返』
本名で入選したのでブログでは黙っておりましたが、 3月1日の東京新聞・
中日新聞に掲載された 『 代返 』という300文字小説が、 まさかの【優秀賞】
を受賞し、 本日の東京新聞・中日新聞に「評」と「受賞者喜びの声」が掲載
されました。
各賞は、 昨年11月から今年4月までに寄せられ、 入選作として掲載された75点
から選ばれました。
【最優秀賞】が1人で、 【優秀賞】が3人。
応募総数は2722だそうです。
一か月前に電話でインタビューを受けたとき、 記者のかたに伺ったのですが、
選考会ではSF作家の川又千秋先生が推してくださり、 わりと早くに受賞が
決まったそうです。
川又先生、 ありがとうございます。
まさか賞をもらうことになるなんて、 夢にも思ってなかったです。
人生って悪いことばかりじゃないんだな、 とつくづく思いました。
これからも慢心することなく、 陽の当たらないところで細々と書いてゆきます。
◇ ◇ ◇ ◇
<優秀賞>「代返」
教壇の上から広い教室を一瞥(いちべつ)すると、教授は静かに出席をとり始めた。
「…明石くん」
「はいっ!」
「…伊藤くん」
「へいへい」
「…井村くん」
「ハイでごわす」
「…牛島さん」
「あーい♪」
「…江川くん」
「おっす!」
教授はため息をつきながら出席簿を閉じると、中央の席にぽつんと座っているぼくに、
呆れた顔で言った。
「きみねえ、いくらなんでも無理があるよ。一人で四十人分の代返をするのは」
◆この記事は、もうすぐ消滅するgooブログに、2015年7月5日に掲載したものです。
© 2015 Daisuke Asaoka