表紙のイラスト解説 その12

上段
理学療法室で 階段昇降をするクルミ?
下段
この絵は、 おそらく作業療法室。 テーブルで 上肢のリハビリ
( ぞうきんがけや 粘土いじり ) に とり組むクルミとミッチー。
ふたりとも 頭の上に 〝 あるもの 〟 をのせている。
ミッチーは、 ある看護師に想いを寄せていることを クルミにうち明ける。
そして、 薄毛に引け目を感じていることが 彼を弱腰にさせていた。
そんな心情が 痛いほどわかるクルミは、 何とかここで幸せに
なってもらおうと、 ミッチーの背中を押す。
男の友情だ。

思いを寄せる看護師 ・ 水野さんに ラブレターを手わたすミッチー。
そして、 ドアの陰から その様子をこっそりと窺うクルミ。
ミッチーは、 萌ちゃんという看護師がいなくなった寸間を狙って
愛の告白をしたのだ。
左手には、 ナースステーションから戻ってくる萌ちゃんの姿が
みとめられる。
萌ちゃんは 病棟で人気がある看護師だ。 廊下をトコトコと歩く
小柄なジュリエットである。
このシーンは 担当編集者さんを介し、 イラストレーターの
丹下京子さんにリクエストして、 描いていただいた。

上のカットは 『 風が吹くとき 』 というアニメ映画のものである。
もともとは、 原爆の恐ろしさを世に伝える 絵本だった。
そして 右側にいる紳士。
『 オレンジ病棟 』 に登場する 桂光明 (通称ミッチー) という
キャラクターの外見のモデルだ。
ミッチーを生みだすにあたり、 以下のようなことを考えていた。
・社会人だが、 子供っぽさを残した青年である。
・スカスカの薄毛で ずんぐりしている。
・わりと かわいい目鼻立ちである。
(薄毛のテディーベアみたいな感じ)
・いつも ジャンクフードを飲み食いしている。
そんなことをぼんやりと頭に描いているうちに、 行きついたのが
上の紳士だった。
たまたまネットで画像を見たのか、 むかし見た 絵本やアニメが
頭をかすめたのか、 そのあたりは憶えていない。
老夫だったとおもうが、 名前も性格も 憶えていない。
だが、 この紳士の外見にインスパイアーされ、 自分のなかの
ミッチー像が、 よりはっきりしたものになっていったのは 確かだ。
◆この記事は、もうすぐ消滅するgooブログに、2010年5月19日、23日、10月6日に掲載したものです。
©2010 Daisuke Asaoka